大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和22年(ナ)52号 判決

原告

伊藤彌十郞

被告

愛知縣選擧管理委員會

主文

原告の訴はこれを却下する。

訴訟費用は原告の負擔とする。

請求の趣旨

昭和二十二年四月三十日執行の名古屋市會議員選擧に付、同市港區選擧區における大西泰助の當選を無効とし、同年五月十一日港區選擧會が決定せる原告の繰上當選の有効なることを確認する。

訴訟費用は被告の負擔とする。

事實 (省略)

理由

本件訴の請求の趣旨から考えると、本訴は大西泰助を當選者とし、從つて、原告を落選者とする選擧長の決定を爭うものであると解せられる。從つて、原告のした本訴提起までの一連の不服申立は、結局、大西泰助の當選の効力に關する爭訟として取扱うべきものである。ところが、昭和二十二年四月三十日執行せられた名古屋市會議員選擧に當り、同市港區においては、加藤七左衞門、大西泰助、坂章司の三名が當選者と定まり、原告は次點者となつたことは、成立に爭ない甲第一號證の一によつて認めることができるし、右當選人の住所氏名の告示が、同年五月一日にされたことは、當事者間に爭ないことに徴し明かであるから、從つて、原告はまず、右告示の日(同年五月一日)から十四日内に、名古屋市選擧管理委員會に對し異議を申立てなければならなかつたものであることは、地方自治法第六十六條第一項、第五十九條第一項、第六十六條第二、四、七項などの規定に照しまことに明白である。しかるに、原告の同委員會に對する異議申立は同年五月十七日であること、前記甲第一號證の一により明かであるから、右異議申立は法定の期間經過後になされた不適法のものといわねばならない。異議申立、訴願、出訴という一連の手續において、その最初の手續が不適法である以上その後の手續が適法となる筋合はないのであるから、原告の本訴は結局不適法たるを免れない。

次に右大西泰助の當選の効力に關し、訴外加藤豐次郞から適法の期間内に同委員會に對し異議の申立がなされたところ同委員會はその異議を是認して大西泰助の當選を無効とする旨の決定を與へたが大西泰助はこの決定を不服として、被告委員會に對し訴願をしたので、被告委員會は同年九月五日右決定を取消す旨の裁決を與へ、同月十三日はその告示をしたことは當事者間に爭のないことに徴し認め得るところである。そうすると、原告の本件訴が右裁決に不服を申立てるための出訴であるとしても、その出訴は右裁決告示の日たる九月十三日から三十日以内になされなければならぬことは地方自治法第六十六條第四項の明示するとこである。しかるに、原告の本訴提起は同年十一月十九日であること本件記録上明白であるから、結局、右は出訴期間經過後に係り不適法たるを免れない。

どちらにしても原告の本訴は不適法な訴に歸着するといわねばならない。よつて本訴はこれを却下すべきものとし、地方自治法第六十六條第六項、民事訴訟法第八十九條を適用して、主文の通り判決した次第である。

(藤江 茶谷 白木)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例